3.変容の時代 ~バンコク~
このように13世紀、魚と米から始まったタイ族のインドシナ半島での暮らしは、18世紀後半までは、西洋、中国、カンボジア、ビルマといった大きな伝統の影響を受けてその幅を広げていった。同時に、アユタヤー時代に通じて行われた域内ムアン同士の関係から、現在のタイに繋がる地方色を作っていった。そして、19世紀に入ると外国からの移民や商人が増えますます新しい食材や調理法が伝えられた。そして、1855年のボウリング条約によって西洋人との自由貿易の時代が訪れ、その結果タイの外国貿易は飛躍的に拡大した。当時のタイが外国に輸出していたものといえば、米、砂糖を中心した一次産品であった。それらの生産が拡大し、外国に売れば売るほどに商人は利益を得て、移住してきた人たちは富豪になっていった。19世紀後半、タイの水田の面積は急速に伸び、米の市場とそれに群がる商人たちの数も巨大なものになった。その中で、勢力をのばしたのが中国人たちであった。この頃のバンコク中心部の人口の半分は中国人だったというくらいである。そのため、中心部には本格的な中華料理屋が出現していく。