現実には農業における技術革新、生産性の向上はどのような形で現れたのであろうか。農業における技術革新は、量的拡大(単収向上)や品質向上も当然ではあるが、それよりもむしろ所要労働の軽減の面であらわれる場合が多い。新しい技術や農機具の導入によりそれまでよりも楽に農作業が行えるようになる。このことにより一人で多くの面積をこなしうるようになり、農業全体としての所要人数の減となってあらわれる。このことは特に第二次世界大戦後の農業において大きく現れ、第二次、第三次産業のための労働力需要の急激な増加に対応する労働力供給源となった。
しかしながら、農業は他産業と比較して既に成熟した産業である。また自然の摂理に沿った生産しか行い得ない産業でもある。従って農業における技術の発展とそれに基づく農業そのものの経済的発展速度は当然のことながら工業、商業のそれに比べれば遅々たるものがあった。また人々の生活水準の向上は食料以外の工業製品や各種サービスの需要を飛躍的に増大させた。これは社会経済的には農業の地位が低下し、他方、第二次、第三次産業の地位が向上することとなった。