アユタヤー時代とは、一般的に1350年にアユタヤーに王権がたって、1767年に進入してきたビルマ軍によってアユタヤーが壊滅されるまでの約400年間である。しかし、実際はこの時期ずっと同じアユタヤーに王宮があったわけでもなくアユタヤーだけが統一的な国家を形成していたわけではない。それぞれの地方にはムアンと呼ばれる大きな町が、それぞれで領主をもっていた。そして、その下に小さなムアンが存在していた。このように、アユタヤー時代は交易ネットワークが発達した時代であるとともに、各ムアンの関係が密になった時代でもあった。関係が密になれば文化的な交流は自然に起こってくる。人が交われば、婚姻関係も生まれ、すぐに台所レベルでの文化交流が始まってくるからである。各ムアンはそれまで培ってきた、それぞれの自然環境を背景にした食生活の伝統を交換し、影響を与えあって、現在のタイ料理につながる地方料理の伝統を形成していった。